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 「本物」の歴史の授業を創るための考え方やアイデアを紹介します。明日を担う賢い日本人を育てるための歴史教育ブログです。

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歴史教育ノ道標100問題解決学習⑦

【歴史教育ノ道標100問題解決学習⑦】
5冊目は日本教材学会編『教材事典 教材研究の理論と実践』(東京堂出版 執筆者:小松伸之)を取り上げます。最終回とします。

 ここではとくに定義はされていません。
 その代わりに社会科について「国史や地理などの教科をただまとめたものではなく、その総合性に大きな特徴を持つ教科である」とあります。

「今日的文脈における活用」とタイトルが掲げられたパートには以下のような執筆者の見解が述べられています。
①社会科教育の歴史の中で、問題解決学習と系統学習は対立的なものとして考えられてきた。
②がしかし、前者が「生徒の興味・関心」後者が「学術的成果」を中核に据えているという相違点はあるが、学習対象に科学的にアプローチしようとする点は共通している。
③実際の学習場面では両者を使い分け、あるいは組み合わせて進められている。
④ゆえに、両者を単なる対立構造でとらえるのではく、それぞれの長所を活用して大きく結びつけながら授業を構成していく必要がある。

わかりやすいまとめです。
両者を対立するものとしてとらえていたのはどうやら1950~80年代までのようです。新しい令和の時代においては、両者を対立したものととらえるのはもはや時代遅れと言えるでしょう。
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2019.06.14(Fri) | 歴史教育ノ道標 | cm(0) |

歴史教育ノ道標99問題解決学習⑥

【歴史教育ノ道標99問題解決学習⑥】
4冊目は日本カリキュラム学会編『現代カリキュラム事典』(ぎょうせいp168執筆者:市川博)を取り上げます。

この事典では以下のように定義されています。
「学習者が直面する具体的な学習問題をとらえ、その問題の解決のための思考活動を行って究明・解決を図っていく過程で問題解決の諸能力を育成しようとする学習形態である」
以下は他の事典にも書かれていることですが、問題解決学習はデューイの学習理論を基礎にしてアメリカで生まれ、日本では大正自由教育期に導入されたが、全国的に普及したのは戦後の新教育期です。その後の展開はについてはこれまで紹介した事典と同じことが書かれています。

この事典はカリキュラム事典なのでカリキュラムに関連して以下のように説明されています。
①学習者の能動的活動と教育内容の理解のどちらを重視するか、その度合いによってカリキュラム構成は多様となる。
②前者を重視したとしてもその中でさらにバラエティがある。
 例として・・・
A:課題解決を図る一定の方法論(過程)をあらかじめ定めてその方法の習得を重視するカリキュラム論(発見学習や課題解決学習)
B:その子なりの個性的な方法でその解決を保障していく過程で、的確な問題解決能力の育成を図らんとするカリキュラム論(社会科の初志をつらぬく会の問題解決学習論)

ここで執筆者の市川氏が言っていることはここまで紹介した事典でも触れられていました。ということは、問題解決学習は方法論としてもカリキュラム論としても多様であるということです。
 ある決まった定式に当てはまらないからと言って、それが問題解決学習ではないというのは暴論であることがわかります(おそらく私の歴史人物学習を批判する方は上記の「社会科の初志をつらぬく会の問題解決学習論」が念頭にあると思われます)。

2019.06.13(Thu) | 歴史教育ノ道標 | cm(0) |

歴史教育ノ道標98問題解決学習⑤

【歴史教育ノ道標98問題解決学習⑤】
 3冊目は辰野千壽編『第三版学習指導用語事典』(教育出版p132執筆者:大日方重利)です。

 問題解決学習は次のように定義されています。
「学習者が学習主題としてなんらかの問題を自覚し、その解決法についても主体的能動的に取り組み、考えていくことにより学んでいく学習法」

前回の『現代教育方法事典』と同じく、問題解決学習が1950年代に批判が高まり、系統学習へと移行したこと及び近年の動向として以下のように述べられています。
「これら二つの学習法を対立的にとらえるのでなく、問題解決学習の手法を系統学習に取り入れて、児童・生徒の学習に活性化とゆとりを回復させようとする動きも出てきている」
これも前回紹介した『現代教育方法事典』と同じことが書かれています。この事典の初版が1987年ですから、少なくとも80年代以降そして今回の新指導要領までこの「共存共栄」の流れが続いているということでしょう。

これについて大日方氏は二杉孝司氏が整理した「二つの動き」を紹介しています。
①系統学習などにおいて、教育内容を系統化し、問題解決学習的な教育法を取り入れようとする傾向
②もっと積極的に、教育内容の編成においても、児童・生徒の問題意識を反映させようとする傾向
「共存共栄」についてのアプローチはおおよそこの2つというわけです。私の問題意識は常に①でした。歴史学習は基本的には①の方向を取らざるえないと思います。もちろん、第96回でも述べたように地域の歴史教材などを取り上げるてカリキュラムに積極的に位置付ける②の方向も大事にしたいと思います。

私の歴史人物学習への批判は①と②の峻別がない状態でなされているように感じています。どちらも問題解決学習の現場への浸透にとって重要であることを確認したいと思います。

2019.06.11(Tue) | 歴史教育ノ道標 | cm(0) |

歴史教育ノ道標97問題解決学習④

【歴史教育ノ道標97問題解決学習④】
2冊目として日本教育方法学会編『現代教育方法事典』(図書文化社p321執筆者:山本順彦)を見てみましょう。

問題解決学習は、それまでの伝達・注入型学習への批判として現れました。「知識は、あくまで子どもたちの直接の興味・関心の対象である社会生活から生じる現実的問題を解決するなかで、その解決に有用な手段として習得される」とあります。前回の事典の説明とほぼ同じです。

この事典では問題解決学習の4つの「問題点」が整理されています。
 ①現状への適応主義的教育観 ②系統性の軽視 ③「はいまわる経験主義」=基礎学力低下 ④教師の指導性の後退
こうした問題点によってしだいに衰退したが、近年は問題解決学習の意義が再認識されるようになっていると記されています。

 続いて「再評価と課題」として以下の点が指摘されています。ここが重要です。
*系統学習の場合にも「子どもたちの能動的かつ主体的な探求的思考活動の組織、展開という視点は」考慮される必要がある。
*「科学的知識の系統的習得に重きをおきつつ、同時に、できるかぎり子どもたちの主体的かつ能動的な探求的思考活動の過程として学習過程を展開しようとする努力」が必要である。
*こうしたときに「問題解決学習は、真に継承、発展させられると考えられる」
 
指摘されてきた問題解決学習の問題点を克服するためにも、系統学習と共存することこそ真の問題解決学習の発展だという重要な見解です。
 上記①~④は社会科歴史の問題点そのものと言ってよいでしょう。私の提唱する歴史人物学習はまさにこの克服を念頭においた学習なのです。
 それが教育史的な観点からも証明されたように思います。新指導要領で「主体的・対話的で深い学び」が重視される背景には、系統学習と問題解決学習の共存共栄が現在においても課題であることがあるのではないでしょうか?

2019.06.09(Sun) | 歴史教育ノ道標 | cm(0) |

歴史教育ノ道標96問題解決学習③

【歴史教育ノ道標96問題解決学習③】
日本社会科教育学会編『新版社会科教育事典』(ぎょうせいp220~221)の検討の最終回です。
 この項目の執筆者である藤井千春氏は次のような「理想的な」問題解決学習の展開を例として示しています。

*体験活動(見学・調査・インタビュー・制作など)を行う→身近な社会生活について調査する→人々の願いや実現への取り組みを明らかにする課題を設定する→情報を収集し疑問をもつ→疑問を問題にする→必然性のある学習活動を展開する

この展開は小3や小4の身近な地域学習にはピッタリです。小5の産業学習もこの展開がベターでしょう。小6や中学の歴史分野はどうでしょう?例えば、年間に1回ぐらいはその学校の地域歴史教材を取り上げて学習するのにこの展開は大いにありでしょう。ぜひ取り組みたい学習です。しかし歴史学習の内容は多岐に渡ります。縄文から始まって戦後までをすべてこの展開でやるというのはあまり現実的ではありません。

さらに藤井氏は「「問題」に正解があるわけではない」と言っています。そして「「問題」の本質的な役割は、子どもたちに調べ直し、考え直しを迫ること、すなわち子どもたちに新たな事実やそれらの関連に気付かせ、新たな見方・考え方を育成する方向に学習活動を再発信させることである」と述べています。
藤井氏は「問題」の「本質的な役割」を的確に指摘しています。「新たな見方・考え方」の育成です。歴史人物になってみる=シュミレーションするということは自分以外の視点をもって歴史事象を検討することなのです。現代に生きる自分以外の見方・考え方を手に入れることは、まさに「新たな見方・考え方」なのです。

 ここまで藤井千春氏が執筆した「問題解決学習」を検討してきました。
 私の歴史学習を「理想的な」問題解決学習の展開をもとに見てみれば物足りなさを感じるかもしれませんがそれは仕方ありません。現実の学校における歴史学習の宿命です。
 しかし、本質的な点から見てみれば問題解決学習の一つの形態であることは間違いないのです。大事なことは問題解決学習の「見かけ」ではなく「本質」です。

2019.06.09(Sun) | 歴史教育ノ道標 | cm(0) |